排尿に伴う痛みは,臨床現場でよくきかれる訴えの一つです。入院病棟では,尿道膀胱カテーテル挿入・抜去後の排尿痛,外来では膀胱炎症状などが主な原因になります。訴えの個人差はかなり大きく,男女の性差,年齢,基礎疾患の有無などによっても大きく異なります。
男性では尿道が長い(約15cm)ため,排尿痛が起きる時期によってある程度,原因となる疾患がわかることがあります。
排尿開始時の疼痛は,前部尿道(陰茎部)の炎症あるいは亀頭包皮炎に伴う症状です。
排尿中に痛みが持続するのは,急性尿道炎や尿道狭窄,そして膀胱炎が考えられます。
排尿の終わり(排尿終末時)に痛みを訴える疾患には,前立腺炎や膀胱頸部の炎症のときに起きます。
女性患者では,尿道が短いためにこの分類はあてはまりません。女性でもっとも排尿痛を起こす膀胱炎では「おしっこのとき,ずっと痛い」,あるいは「したあとに,ズキズキする」といった表現が多いようです。
生理痛と関連して周期的に排尿痛,排尿違和感を訴える患者に対しては,子宮内膜症などの婦人科疾患が関係していることもあります。また,更年期症状の一部として,頻尿や尿漏れなどの排尿症状のなかに排尿痛を訴えることもあります。
痛みの程度を表現することは難しいことです。個人差もありますし,初めてのときはどのように表現していいか,わからないものです。そのときに目安になる一例として, 4段階の分類があります。これは尿路感染症の薬剤効果判定の基準にも使われています。
「きわめて強い」「明らかに病的」「軽度」「痛みなし」の4つです。治療経過をみるのに役立つことがあります。
排尿の痛みは患者さんにとってはたいへんな苦痛です。それ以上に悩んで,訴えにくい症状が「おしっこが漏れる」ことを伴うかどうかです。「泌尿器科にかかるときには,先生に恥ずかしがらずに大事なことだからお話してください」とお願いするしかありません。
一番大切な検査所見は,検尿です。検尿所見を診てから,患者さんの排尿痛がどんな疾患によって起きているのかを診断に結びつけていきます。