腎臓はほぼ第1腰椎の高さにあって,脊柱両側の後腹膜腔にある左右一対の臓器です。大きさはおよそ縦12cmで,重さは約120gです。
大動脈から分岐した左右の腎動脈から心拍出量の約25%の大量の血液が送り込まれます。腎内の血管と尿細管が組み合わさって構成されるネフロンで尿が生成されます。すなわち腎の表層約1cmの厚さの皮質にある糸球体で原尿が生成されます。腎内の尿路系である尿細管から集合管へと流れる間に再吸収されて最終尿になります。
一側の腎には約100万本のネフロンが含まれています。ネフロンの機能は,糸球体濾過,尿細管再吸収,尿細管再分泌の3つから成り立っています。糸球体は毛細血管のかたまりで,内皮細胞,上皮細胞,基底膜,メサンギウム細胞から構成されています。
腎炎はこの糸球体における炎症です。メサンギウム細胞の増殖,基底膜の増加を基本病変としています。
咽頭炎などの上気道炎,または皮膚感染症のあとで,1〜3週間(後者では3〜6週)の潜伏期間を経て発症します。起因菌としてはA群β溶血性連鎖球菌がもっとも多くみられます。学童期に頻度が高いです。
小児では多くの症例では3〜6カ月で治癒します。しかし成人では,40%程度が慢性化します。
治療は対症療法が中心で,安静が基本になり大切です。発症早期には入院,安静が原則です。
食事療法としては,乏尿期(1週間程度)には塩分制限(3g/日),水分制限(前日尿量+500〜800ml),低蛋白食(0.5g/kg/日)を行います。
利尿期に入り,腎機能・高血圧が正常化すれば,制限を徐々に緩和します。薬物療法としては,乏尿・浮腫・高血圧の時期には利尿剤を使います。また,高血圧には降圧薬を使います。咽頭炎・皮膚炎が持続していれば,起因菌除去目的でペニシリン系抗菌薬を投与します。
血尿,蛋白尿など腎炎の症状が急速に進行して腎機能低下をきたす疾患群です。数週から数カ月で腎不全になることもあります。抗好中球細胞質抗体(anti-neutrophil cytoplasmic antibody;ANCA)が糸球体免疫染色より検出されることが多く,ANCA関連腎炎ともいわれています。
ステロイドパルス療法などの免疫抑制の積極的治療を初期から行います。高齢者では免疫能低下による,肺合併症などに注意が必要です。補助療法としてヘパリン,ワーファリンなどの抗凝固薬を併用します。
腎炎が慢性に経過している状況です。
蛋白尿,血尿,高血圧を示し,数年〜数10年にわたって,徐々に腎機能障害が進行するものと定義されています。日本では,IgA腎症が多いとされています。
潜在型では蛋白尿の症状も軽く,比較的予後良好です。進行型では,中等度以上の蛋白尿・高血圧の合併があり,末期には腎不全に進行します。
腎生検による組織診断が重要で,その結果に基づき治療法を選択します。
腎機能低下をできるだけ抑えることが目標になります。
したがって,生活指導,食事療法,薬物療法が中心になります。
日本腎臓学会のガイドラインがあります。蛋白尿と血圧を指標に決めます。1日1g以上の蛋白尿があり高血圧を合併している場合は,腎機能低下と社会生活を考慮して運動制限を行います。
腎機能,血圧,1日尿蛋白量に応じて蛋白制限を行います。
たとえばクレアチニンクリアランスが71ml/分未満では,0.7〜1.0/kg/日の蛋白摂取制限を行います。蛋白制限するときには,糖質や脂質の摂取量を増やして1日30〜35kcal/kg/日のエネルギー摂取量を確保します。
腎機能と1日蛋白量に応じて,抗血小板剤,ステロイド,降圧剤が使われます。
たとえば1日尿蛋白が1g以上持続し,高血圧合併例には,アンギオテンシン変換酵素阻害剤(ACE阻害剤),アンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)が腎保護作用を持ち有効です。
【側註】
【ACE阻害剤】カプトリル,レニベースなど。