健康成人の一日尿量は,おおむね800〜1,600mlです。多尿は一般的には,一日3,000ml以上に尿量が増加した状態をいいます。ただし,患者の訴えには多尿と頻尿の区別がつかないこともよくあります。
多尿の原因は,コントロールされていない糖尿病,慢性腎不全の初期,尿崩症,多飲が多くみられます。
トイレが近い,という訴えは泌尿器科のみならず,内科でも婦人科でも整形外科でも,どこでも訴えの多い症状です。患者QOL(Quality of life;生活の質)を低下させる状況で,高齢社会にともなってますます患者数は増加しています。
健康成人の排尿回数はおおむね1日5〜6回です。個人差,気温,食事,運動によって大きく変化します。一般的には一日10回以上を頻尿とよんでいます。
夜間頻尿は,就寝から起床までに2回以上,排尿のために起きることをさします。最近のアンケート調査では,65歳以上の男女ともに平均夜間排尿回数は1.8回(約2回)でした。加齢に伴い,就寝中の腎臓から尿量増加や眠りが浅くなることも一因になっています。
日常診療で多くみられる原因疾患のポイントのみ示します。
普通,健康な人は400〜500mlの尿をためることができますが,過活動膀胱(overactive bladder;OAB)では,100ml前後の尿がたまると膀胱が収縮し尿意をもよおしてがまんできなくなります。
過活動膀胱は,膀胱が尿でいっぱいになる前に,膀胱が自分の意思に反して,勝手に収縮し尿失禁(尿をもらしてしまうこと)を起こすと考えられています。
過活動膀胱の症状は尿意切迫感(突然の尿意を感じ,がまんできなくなる),頻尿,切迫性尿失禁です。