膀胱がんとは?
膀胱がんは尿路上皮(移行上皮)細胞から発生する悪性腫瘍です。日本では人口10万人あたりの罹患率は6~7人、男女比はおよそ3:1で男性に多く発症します。診断時の平均年齢は65歳で、約85%は膀胱に限局した表在がん、約15%は浸潤がんといわれています。大部分は原因不明です。ただし喫煙者は、非喫煙者の2~3倍の割合で膀胱がんになりやすいといわれています。また、化学薬品(ベンチジン、有機溶媒)や染料を扱う職業にも発症率が高いことが知られています。
症 状
1)肉眼的血尿
膀胱がんの自覚症状として、もっとも多く認められる症状です。膀胱炎と違って、痛みは伴わないことが一般的です。数日経過すると突然血尿が止まってしまう場合があります。
2)排尿痛
ときには膀胱痛、下腹部の痛みで発見されることもある膀胱炎と非常に類似していますが、抗生物質を服用してもなかなか治らないことが特徴です。
3)背部痛
膀胱がんが周囲に広がり尿管口を閉塞するようになると、尿管や腎盂が拡張する水腎症になり、背中の痛みを感じることもあります。さらに進行すると、貧血、発熱、体重の減少といった全身症状もでてきます。
診 断
1) 膀胱鏡
一般的には乳頭状腫瘍は、異型度は低く、筋層浸潤がないことが多いです。一方、結節状腫瘍は、異型度が高く浸潤傾向や転移を起こしやすい傾向にあります。
2) 尿細胞診
患者に負担をかけずにできる有用な検査です。
3) 画像検査
腹部CTや胸部CT、腹部の超音波検査、排泄性腎盂造影検査などでがんの拡がりと転移の有無を調べます。
4) 膀胱生検
がんの確定的な診断には、腰椎麻酔下に膀胱鏡を用いて膀胱粘膜生検を行い、病理学的診断を行います。
5) MRI、骨シンチグラフィー
がんの診断がついてから原発腫瘍の進展度、周囲臓器への転移の有無、骨転移の診断のために行います。
治 療
膀胱がんの治療には以下の方法があります。
1) 経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt)
腰椎麻酔を行って膀胱鏡で腫瘍を観察しながら、がんを電気メスで切除する方法です。手術時間は1時間程度です。手術後、膀胱内尿道カテーテルを2~3日間留置します。
2)膀胱全摘出術
がんの浸潤度が高い病期のT2b以上の症例で、TUR-Btでは切除しきれないときに行います。全身麻酔を行い、骨盤内リンパ節郭清と膀胱の摘出を行い、男性では前立腺、精、女性では子宮も摘出します。摘出後は尿路変更術として、回腸導管、自然排尿型新膀胱造設術を行います。
3)膀胱内注入療法
TUR-Bt後の膀胱内再発予防目的や、膀胱内に上皮内がんや多数の乳頭状のがんがある場合には、膀胱内にBCGや抗がん剤を注入する治療法です。外来で週に一度の注入を数回行います。
4)全身的抗がん剤治療
転移のある進行した膀胱がんが対象になります。M-VAC療法(メソトレキセート、ビンブラスチン、アドリアマイシンあるいはその誘導体、シスプラチンの4剤の組み合わせの治療)が、現在、膀胱がんの治療にもっともよく行われる化学療法です。
治療成績
乳頭状で異型度の低い表在性膀胱がんは、予後良好です。しかし、膀胱内への再発をしばしば起こします。浸潤性膀胱がんで手術を行った場合、5年生存率は病期分類別でみるとT1で約95%、T2で80%、T3で40%、T4で20%です。