尿路結石とは?
尿路結石には、結石の存在部位によって腎結石・尿管結石の上部尿路結石と、膀胱・尿道結石の下部尿路結石があります。日本では罹患患者数が年間約11万人と多く、生涯罹患率(一生の間に結石を患う率)は100人のうち約5人といわれています。男女比は2~3:1で男性に多く、年齢分布では30~50歳代に多い疾患です。一度尿路結石ができた患者の約半数は、その後にまた結石再発します。したがって、再発予防のために生活・食事指導も大切になります。
病態生理
1)尿路結石の形成機序
尿路結石の成因は非常に複雑で、まだ解明されていない点も多いです。一般的には腎尿細管や集合管で結石の芯になる結晶が析出して核ができ、尿流の停滞でこの核が成長・凝縮して大きくなり、結石が形成されると考えられています。
2)尿路結石の成分
日本で多い尿路結石の成分は、頻度順にすると次のようになります。
1. カルシウム結石(約85%を占める)
2. 感染結石
3. 尿酸結石(高尿酸血症に伴うことが多い)
4. シスチン結石です。
3)症状と診断
1. 症 状
症状の三主徴は疼痛、血尿、結石排出です。大部分の患者は、背部から側腹部への突然の激しい疼痛(仙痛発作)を訴えて来院します。結石が尿管内を下降するときに、尿管の生理的狭窄部で嵌頓し、尿の通過障害をきたして腎盂内圧が高まり疼痛をきたします。そのさいには、しばしば嘔気、嘔吐、冷感などを伴います。
2. 臨床検査・X線所見
仙痛発作時にはほとんどの患者で血尿がみられます。そのうち肉眼的血尿は約20%で、80%は顕微鏡的血尿です。腹部単純写真(KUB)で約85%の尿路結石がみつかります。しかし、尿酸結石とシスチン結石はX線陰性結石で検出されません。超音波検査(腎エコー)では、どの結石も音響陰影(acoustic shadow)を生じるので診断が可能です。また、水腎症の程度もすぐにわかり、外来ですぐに検査ができる利点があります。
4)尿路結石の治療について
1. 仙痛発作に対する救急処置
まず痛みを抑えるために、尿管の攣縮を抑制する副交感神経抑制剤(硫酸アトロピン0.5mg)を生理食塩水20mlでうすめてゆっくりと静注します。疼痛がひどいときには、非麻薬性鎮痛薬(ペンタゾシン15~30mg)を筋注することもあります。下部尿管結石の痛みに対してはボルタレン坐薬も有効です。
2. 自然排石促進
7mm以下の小さい結石では自然排石が期待できるので、排石促進のために1日尿量が1,500~2,000mlになるように水分を多くとるように説明します。また、尿管の蠕動運動促進のために適度な運動もすすめます。
3. 外科的治療
1980年代から、尿路結石の外科的治療は急速な進歩をとげました。低侵襲治療法として、内視鏡を用いた経皮的腎結石砕石術(PNL)、経尿道的尿管砕石術(TUL)が開発され、さらに体外衝撃波結石破砕術(ESWL)が広く普及しました。開腹手術はほとんど行われなくなりました。
4. 再発予防のための生活食事指導
尿路結石は繰り返しできることが多く、定期的な外来での検査が必要です。尿路結石の70~80%を占めるカルシウム結石は、特発性で再発予防の決め手はありませんが、予防のための生活食事指導の一例を表に示します。
■側註【ESWL(extracorporeal shock wave lithotripsy;体外衝撃波結石破砕術)】体外においた衝撃波発生源(電極スパーク、ピエゾ、電磁コイルなど)から発生した衝撃波を体内に誘導して、結石に衝撃波を収束させて破砕する装置である。衝撃波が収束する焦点に結石を位置決めするには、X線透視あるいは超音波が用いられる。衝撃波は体内では、音響インピーダンスの異なる結石で焦点を結んで、圧縮力と引張力、さらにマイクロバブルによって結石を砂状に細かく粉砕する。
【副甲状腺機能亢進症】副甲状腺(上皮小体)腺腫によって副甲状腺ホルモン分泌が高まり、血中カルシウム濃度が上昇して、尿中へのカルシウムとリンの排泄量が増加してカルシウム結石を高頻度で形成する。
【高尿酸血症】アルコールや動物性蛋白質摂取量の増加に伴って日本でも増加傾向にある。尿のpHが低い酸性尿では、尿酸は結晶化しやすく、これに脱水などの誘因が加わると尿酸結石を生じやすくなる。
【腹部単純X線撮影(KUB)】腎(kidney)、尿管(ureter)、膀胱(bladder)までの範囲を撮影する。【PNL(percutaneous nephrolithotomy)】エコーガイド下に背部の皮膚から内視鏡を直接腎盂内に挿入して砕石する。全身麻酔を要する。
【TUL(transurethral lithotomy)】尿道から細い尿管鏡を膀胱内に入れ、さらに尿管口より尿管内に挿入して、砕石を行う。硬膜外麻酔あるいは腰椎麻酔を要する。