腎がんの原因・発生頻度は?
泌尿器科で診るがんのなかでは、わが国では人口10万人あたり5.3人、年間の死亡患者数は約3,000人です。男女比は、2~3:1と男性に多いがんです。
どんな症状でみつかるのでしょう?
人間ドックでの超音波診断などで症状ない小さい腫瘤としてみつかることが多くなっています。偶発がんといいます。症例の約1/3近くを占めるようになっています。腎がんの古典的三主徴として、血尿・疼痛・腹部腫瘤があげられています。これらの症状がすべてそろっているのはごくわずかです。血尿が初発症状になる患者は約40%です。
進行がんでは、全身倦怠感、体重減少、貧血、発熱などの全身症状で発見されることもあります。
診断に必要な検査にはどんなものがあるのでしょう?
- 1. 検尿による血尿のチェック、血液生化学検査による腎機能のチェック。
- 2. 超音波診断による、腎腫瘤の発見。直径1cmくらいの小さな実質性腫瘤でも診断可能です。
- 3. CTスキャンは、腎がんの確定診断、がん病巣の周囲への拡がりぐあい、リンパ節転移の有無、肺・肝転移の有無の診断に重要な情報を与えてくれます。
- 4. 進行がんでは、骨転移の検索のために全身骨シンチグラフィーが行われます。
- 5. がんの拡がり(病期)はTNM分類を用いています。
治療法にはどんなものがあるのでしょう?
- 1. 病巣のある腎臓を摘出する根治的腎摘出術が標準術式です。腹部正中切開あるいは腰部斜切開によって後腹膜腔にある腎臓を摘出します。
- 2. 偶発がんで小さい腫瘍では、腎部分切除術が行われます。がん組織を周囲1~2cmを含めて切除し、健常な腎を温存する方法です。
- 3. 腹腔鏡あるいは後腹膜鏡などの内視鏡を用いて、小さな創で手術する方法も徐々に普及しています。
腎がんが転移したときの治療法は?
- 1. 腎がんは従来は抗がん剤、放射線治療は効きませんでしたが、最近分子標的薬が数多く開発されています。保険適応もあり、専門病院で投与されています。
- 2. 免疫療法も新たな治療が開発されつつあります。
- 3. 肺や肝、脳、骨など転移しやすい部位の病巣が小さく、患者の状態がよいときには、外科的切除も行われます。
腎がんの治療後の予後は?
生存率は、病期と関係します。5年生存率でみてみましょう。
・T1(直径7cm以下で腎に限局している)ときは→88~100%
・T2あるいはT3a(腎筋膜を越えない)では→40~60%
で比較的予後は良好といえます。しかし、進展度がますと、
・T3a(静脈内に進展する)では→15~20%
・遠隔転移を有するときには→0~20%と非常に悪くなります。
【インターフェロン】白血球、リンパ球の作り出す物質で、ウイルス未感染細胞に抵抗性を与える。がんに対しては腫瘍免疫担当細胞を刺激する。製品名:スミフェロン、オーアイエス、イントロン。